・雨漏りのプロ(専門家)が教える!! 雨漏りの原因トップ5(和瓦屋根編)
突然の雨漏り!! まさか自分の家が雨漏りするなんて…。
柱は腐ってないかな? カビも心配。そもそも修理費用はいくら掛かるものか検討も付かない。それに雨漏りの原因を知りたい。
など、ちゃんと直るのか不安ですよね。
【屋根(小屋)裏の雨漏り】 ↓
【雨漏りの湿気で発生したカビ】 ↓
【室内に発生した雨漏り】 ↓
この記事はこんな人の役にたちます。
・雨漏りしているがどこから漏れているか原因と対処法を知りたい。
・雨漏り修理費用を安くおさえたい。(部分補修で直したい)
・雨漏り工事をこれから頼むつもりだが業者任せは不安。(見積りは取ったけど適正か分からない)
・雨漏り修理費用の金額を知りたい。
・雨漏りの修理をやってもらったが、まだ雨漏りしている。
・修理業者さん(請負った現場の雨漏りが止まらない)
こんな方達のお役にたつ記事です。
もくじ
1.雨漏りしやすい箇所トップ5(和瓦屋根編)
2.雨漏り箇所別による雨漏り修理方法(全体工事を行わず部分修理で直す方法)
3.雨漏り工事別、修理費用の目安
4.まとめ
雨漏りの原因は大まかに分けると
【屋根】 ↓
【外壁】 ↓
【ベランダ】 ↓
【屋上】 ↓
【サッシ(窓など)】 ↓
以上です。必ず上記のどこかから漏れています。原因不明の雨漏りはありません。
今回は屋根(和瓦)に絞ってお話しします。
1.プロ(専門家)が教える雨漏りし易い箇所トップ5
~和瓦屋根編~(陸屋根/屋上タイプは別です)
1位 面戸漆喰(役物漆喰)
2位 谷部、及び板金部
3位 構造上、及び以前の工事の施工不良
4位 棟の傾き(のし瓦の傾き)
5位 天窓(トップライト)
1-2.面戸漆喰(めんどしっくい)とは
面戸漆喰(めんどしっくい)とは? あまり聞きなれない言葉だと思いますが、瓦屋根の棟(むね)と呼ばれる部分に白いセメントのような物が塗ってあります。それの名称を面戸漆喰といいます。
【本棟(ほんむね)】 ↓
【拡大】 ↓
【隅棟(すみむね)】 ↓
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ではその面戸漆喰の役割とはナンなのか?面戸漆喰の役割は棟部の熨斗(のし)瓦を伝って流れてきた雨水を、適切に地瓦(桟瓦)に流す役目をしています。
【熨斗(のし)瓦3段積み】 ↓
【拡大】 ↓
【熨斗(のし)瓦】 ↓
棟の内部は棟積み時に使用する葺き土が詰まっており、面戸漆喰はその葺き土が流れていかないようにフタの役目もあります。このフタが剥がれたり、割れたりしますと雨水が棟の内部へ浸入し雨漏りに繋がります。
【隅棟(すみむね)工事前】 ↓
【棟内部の土が流出しないように、漆喰がフタの役割もになっている】 ↓
拡大 ↓
もしくは葺き土が流れて中の土が痩せて空洞になると、のし瓦が傾き勾配が緩やかになり、雨漏りの危険性が大幅に増します。
そうなってしまうと棟の積み直しとなってしまう為、費用もかさんでしまいます。面戸漆喰とは瓦屋根の重要な部分といえます。
【面戸漆喰が劣化して中の葺き土が露呈している】 ↓
1-2-1.役物漆喰(やくものしっくい)とは
役物漆喰とは鬼瓦や東鬼、かい合いや棟尻(坊主)、巴瓦に使われる漆喰の事です。
【鬼鼻漆喰が取れて雨漏りしている】 ↓
【拡大】 ↓
【鬼瓦漆喰が取れて雨漏りしている】 ↓
【拡大】 ↓
【取合い(かい合い)漆喰の劣化】 ↓
【拡大】 ↓
この役物漆喰も面戸漆喰どうよう雨水を棟の内部に侵入させない為の大切な部分になります。
特に東鬼部や鬼首、鬼鼻の漆喰の劣化や破損からの雨漏りは非常に多いです。
【東鬼漆喰の劣化による雨漏り】 ↓
1-2-2.漆喰の性質とは
漆喰は防水性がありながら通気性も備え持つ性質があるため、屋根の面戸に使用すると雨水は通さないが瓦の裏にこもった湿気は外に排出してくれるという優れ物なのです。
万が一、多少の雨水が浸入しても葺き土が水分を吸収し晴れの日に漆喰から湿気を外に排出するようになっています。
1-2-3.漆喰(本漆喰)の欠点
値段と工事の手間が掛かってしまう。(仕上りが職人の腕に左右されやすい)
漆喰とは消石灰を主原料にスサや油(防水用)などを配合したものを言い、今 普通に手に入る塗り物(セメント系)とは異なり専門的には『本漆喰』と呼びます。この本漆喰はあつかいが非常に難しく左官歴の浅い職人では上手く塗れません。
そもそも本漆喰単体では水平部に塗る事は出来ず、『ツノマタ』という海草ノリを使って粘度をつけて使用します。(配合も職人さんの好みがあります)手間と値段の折り合いで今ではほとんど一般家庭で本漆喰を見かける事はなくなりました。(文化財やお城などでは使用されています)
1-3.谷とは
谷とは屋根と屋根の葺く向きが違う瓦どうしが重なる部分で、瓦の納まりを瓦で雨仕舞いできないような箇所を、かわりに板金材を加工して雨水を流してくれるように作ってある部分の名称です。この部分からよく雨漏りする原因は単純に谷部に使われる板金材がサビて、穴が空いてしまいソコから雨が侵入してしまうからです。
【谷板金】 ↓
1-3-1.谷板金材の種類
谷板金材に使われる材料で、今までもっとも多かった物はトタンです。よくトタン屋根と耳にしますよね。あのトタンです。
トタンとは鉄板の表面にうすい亜鉛の膜を塗ったものです。酸や塩に弱くすぐにサビて穴が空きます。そのため、定期的に塗装をして保護してあげる必要があります。
その他に銅も以前はよく谷板金材に使われていました。銅は加工性もよく意匠性も好まれるため(銅のサビの事を緑青[ろくしょう]と呼び独特の風合いがあります)今でも地方などのお屋敷には好んで使用されています。(ただし銅もサビて穴が空きます)
【トタン材の谷板金の劣化】 ↓
【拡大】 ↓
【トタン材の谷板金の劣化による雨漏り】 ↓
【谷板金がサビて穴が空き、そこからの雨漏り】 ↓
1-3-2.新建材
今では安くて加工性も良く丈夫な素材が出来ています。ガルバニウム鋼板です。こちらはトタンに比べるとサビにも強く長持ちする為、現在のほとんどの新築の家にはこのガルバニウム鋼板が使用されています。
さらに進化したスーパーガルバニウムなる物も近年注目されています。こちらはメーカーが穴空き保証25年も付いている材料になります。
あと、作業性と価格の比較は落ちますが以前からあるステンレスもサビに強く近年ではカラーバリエーションも豊富になり意匠性の面でも見劣りしません。
ただし建築資材関連の『あるある』なんですが、新建材は使用してみると実際にメーカーが謳っているほどの効力が無い物や、思わぬ欠点が見つかる事も多々あります。
実際に市場に出回って10年経って初めて良し悪しが分かります。そのため、材料選びは慎重に行わなければいけません。
【銅製の谷が劣化して雨漏り】 ↓
【ガルバニウム製の谷に交換】 ↓
【サビにくいガルバニウム製の谷へ交換完成】 ↓
1-4.構造上、及び以前の工事の施工不良
以前に雨漏りしたり、屋根に異常があったので工事を行ったが、そもそも工事内容が間違った施工を行っていると雨漏りが止まらない事はおろか、工事をして逆に雨漏りが酷くなったというケースもあります。(新築の状態から構造上の不備がある場合もあります)
【のし瓦の隙間を全てシリコンで埋めてしまい、雨漏りが悪化した】 ↓
【拡大】 ↓
その原因は大抵が瓦の雨水の捌け口をシリコンで塞いでしまったか、漆喰の打設位置不良。地瓦を葺き直す際に葺き土を多めに置き過ぎる、漆喰の打設位置は適切だがのし瓦の勾配が緩い場合に工事後雨漏りが酷くなるケースがあります。
これは単純に職人の知識不足、経験不足からくる施工不良です。もしくは器用なお父さんが良かれと思ってやった補修により誤った施工を行ってしまい雨漏りが酷くなる場合です。
【棟部のシーリング施工不良。雨水の入口はあるが、出口が無い】 ↓
【拡大】 ↓
1-4-1.瓦の雨水の捌け口をふさいでしまうと雨漏りする理由
瓦には隙間があります。この隙間は瓦の裏側の通気を良くする為と、雨水や結露の捌け口(排出口)になってます。
従って、この隙間から雨水が中に入り込んでくると勘違いし、隙間を塞いでしまうと雨水の出口がなくなりオーバーフローを起こして雨漏りします。正しいシリコンの打設方法は雨水の浸入口を塞ぎ、出口をしっかり確保した打ち方を行わなければいけません。
【地瓦部のシーリング施工不良による雨漏り】 ↓
1-5.天窓(トップライト)からの雨漏り
天窓からの雨漏りは非常に多く、天窓が付いてるお宅のほとんどが雨漏りしているといっても良い程です。
では、なぜ5位なのか?天窓が付いていないお宅の方が圧倒的に多い為、その総数から5位となりますが雨漏りする率でいうとダントツの1位です。
【トップライト(天窓)】 ↓
1-5-1.天窓(トップライト)が漏れやすい訳
天窓から雨漏りし易い理由は、基本住宅は屋根でも壁でも1次防水、2次防水、3次防水と防水層を何重にも施して雨水がまんがいち浸入してきても次の防水層でいち早く建物外へ排出するような構造になっています。
屋根の場合、瓦が1次防水です。その瓦の中へ水が入ってきても次の2次防水であるルーフィング(防水紙)が雨水を樋まで流し、室内への雨漏りを防いでくれます。
ですが、天窓は構造上どうしても屋根に穴を空け空間を作らなければ取付けできません。屋根に穴を空けてしまっている訳ですから、経年劣化や工事ミスなどがあると顕著に雨漏りが発生してしまうのです。
天窓は特に定期的なメンテナンスが必要な箇所になりますので注意が必要です。
【トップライト(天窓)の板金部劣化】 ↓
2.雨漏り箇所別による雨漏り修理方法
2-1.面戸漆喰の正しい雨漏り修理方法
面戸漆喰の正しい修理方法は?まず既存の漆喰を撤去してから新しい漆喰を打つ!!と思われている職人さんが多いです。が、コレは間違いです。正しくは土台となる熨斗(のし)瓦と、次に積むのし瓦の小口よりも奥に漆喰を打つ事です。
【のし瓦の小口。ここより奥に面戸漆喰を打たないと雨漏りする】 ↓
この理屈が分からないとどんなに既存の漆喰を綺麗に撤去して新しく打ち直しても雨漏りします。
逆にこの理屈を理解し、現状を正しく目立てできるなら既存の漆喰を撤去しなくても大丈夫なケースもあります。
もともとの漆喰の打設位置が2段目の のし瓦の小口よりも奥に打ってあり、なおかつ最後に納める桟瓦の有効寸法幅が余裕を持って葺いてあれば、目くじらを立てて古い漆喰を必ず取らないといけないという訳ではありません。その場合は漆喰の撤去費用が掛からないため修理費用が少し安くできます。
【面戸漆喰が2段目の熨斗瓦の小口よりも出ているため雨漏りしている】 ↓
【正しい面戸漆喰の打ち方(1段目の のし瓦の面より23mm奥に漆喰を打っている)】 ↓
2-1-1.役物漆喰の正しい雨漏り修理方法
役物とは特殊な役割を果たす部分の名称を指します。
ここでは漆喰で納める箇所になりますので鬼瓦・東鬼・坊主(棟尻)・かい合い(棟折れ)などと呼ばれる箇所になります。この役物漆喰からの雨漏りは非常に多く、特殊な役割を果たしている箇所だけに隙間が大きく屋根の弱点部分になります。
そしてこの役物漆喰部には漆喰だけに雨仕舞いを任せてしまうと漆喰と瓦の隙間や漆喰自体に亀裂が生じると、即雨漏りにつながります。それを防ぐ為に役物部の隙間を変成シリコンで下塗りを行い隙間を埋めてから漆喰を被せると雨漏り防止効果が格段に上がります。このひと手間をかける事が大切です。
ただし、間違っても変成シリコン以外のシリコン材を使用してはいけません。漆喰とシリコンは密着しませんので逆に漆喰が剥がれてしまう原因になるからです。
【鬼瓦漆喰(鬼首)】 ↓
【取合い(かい合い)漆喰】 ↓
【棟尻(坊主)漆喰】 ↓
【東鬼漆喰】 ↓
【鬼鼻漆喰】 ↓
【役物漆喰】 ↓
2-1-2.漆喰の種類
漆喰にも種類があります。1-2-3.でお話した本漆喰を筆頭に、ハイブリッド漆喰や南蛮漆喰などさまざまな種類がでています。
ここでお勧めしたいのは費用対効果の高いハイブリッド漆喰といわれる物です。こちらの材料は本漆喰よりも安価で、仕上りも職人の腕に左右される心配もほとんどなく、耐候性にすぐれた製品となってます。費用無視で腕の良い職人を知っているならば、やはり本漆喰の仕上りには勝てません。時が経てば経つほど白色が増す独特の風合いは他では出せないでしょう。
そして論外ですが南蛮漆喰仕上げ。最近では職人の質も下がり、下地材に使用する南蛮漆喰で仕上げているような業者も目につきます。南蛮漆喰で仕上げると打ったそばから数時間で亀裂が生じたり、数年で劣化し剥離してしまいます。
このように漆喰の種類はキチンと選定して工事を行わなければいけないのです。
2-2.谷板金の正しい雨漏り修理方法①(簡易)
築30年ほど経っている屋根の谷板金に使われている材料で、圧倒的に多いのはトタン材か銅です。
どちらの材質にもいえる事なのですが、経年劣化でサビて穴が空きます。この穴から雨漏りします。
【銅製の谷板金に空いた無数のサビ穴】 ↓
【サビた穴から雨漏り】 ↓
【拡大】 ↓
劣化が軽度の場合は穴にシリコンを打って上から小さく切った板金を張りつけます。そして良くケレン(磨いて傷を付ける)をしてサビ止め塗料を塗り、乾かしてからウレタン塗装を2度塗りしてあげると綺麗に補修できます。
【穴の数が多い為、平板板金で簡易補修】 ↓
2-2-1.谷板金の正しい雨漏り補修方法②
上記の簡易補修では直りそうにない重度の劣化の場合は、瓦の下に隠れている板金部分に原因があるため一度谷部の瓦をめくって補修をする必要があります。
この場合は谷板金自体を新しく新調します。この際、谷部の漆喰を取り除き漆喰不要の雨仕舞いに変更した方が良いです。そもそも、腕利きの板金職人と瓦職人がいれば谷部に漆喰は打たない方が雨漏りしません。(漆喰の隙間から雨がにじんでくると中の葺き土が水を呼び込んで板金を越えて雨漏りします)
谷板金自体を大きめに新調し、立ち上がりをしっかり設け水返しをきちんと作ってあげると雨漏りしにくい谷になります。この時、気をつけないといけない事は板金部に掛かる瓦をきっちり連結して固定してあげる事です。
【谷板金に掛かる漆喰レスの不安定なウロコ瓦を銅線で緊結します】 ↓
【拡大】 ↓
こうしておくと漆喰が無い分雨水をスムーズに下に流してくれるようになり、水分を含んだ葺き土が水返しを越えて雨漏りする危険もなくなります。
【漆喰レスの谷】 ↓
【理想的な谷の状態】 ↓
【漆喰が多すぎて雨漏りしている谷板金】 ↓
【ウロコ瓦の面いっぱいまで漆喰を打ってしまい雨漏りしている谷】 ↓
2-3.構造上、及び以前の工事の施工不良の正しい雨漏り修理方法①(瓦止め)
よくある以前の工事の施工不良による雨漏り補修工事方法です。
瓦屋根の間違ったシリコン打設による雨漏りの場合です。
よく飛び込みの訪問販売型の工事業者がおこなったラバーロックと言われる瓦止めを施工してある現場でよく出くわします。
【雨水の捌け口(出口)までシリコンを充填している間違った工事】 ↓
【拡大】 ↓
もしくは雨漏りしたからといって屋根の構造に詳しくない業者や知り合いの建築屋さんに頼んでしまったケースが多いようです。
この場合の対策は、正しく打たれていない(打ってはいけない)シリコン材をカッターで綺麗に撤去してあげる事です。
ここで重要なのはシリコンにカッターで切れ目を入れるだけでは逆効果だということです。小さな隙間は毛細管現象といって逆に水を吸い上げてしまうからです。そのため、のし瓦の隙間の見えないシリコンまで綺麗に撤去することが鉄則です。
【カッターにて無駄なシリコンを撤去。雨水の捌け口(出口)を確保】 ↓
【拡大】 ↓
2-3-1.構造上、及び以前の工事の施工不良の正しい雨漏り修理方法②(漆喰)
次は漆喰工事の施工不良です。
漆喰は打設位置が間違っていると雨漏りします。古くなり劣化した漆喰の剥がれや亀裂から雨漏りがする事はよくあります。そしてこの漆喰を補修するにあたり、既存の漆喰の上から漆喰を重ね塗りするとたいていの場合雨漏りします。
上記2-1で説明しているとおり2段目の熨斗(のし)瓦の小口よりも漆喰を奥に打たなくてはいけません。しかしこの理屈を理解していない職人さんが、良かれと思って漆喰を分厚く塗るとたいてい小口よりも手前に出てしまい雨漏りします。しかし最低限の漆喰の厚みは必要となりますので、そもそも棟土が多い場合は漆喰の厚みを確保しつつ小口よりも奥に漆喰を打たなくてはいけない為、棟土を削る場合もあります。
【正しい面戸漆喰の打ち方】 ↓
【面戸漆喰の上辺まで隙間なく しっかりと打つ事が大切です】 ↓
2-3-2.構造上、及び以前の工事の施工不良の正しい雨漏り修理方法③(葺き土)
和瓦の下に土を敷く土葺き屋根の施工不良による雨漏りもあります。
これは瓦の下に粘土状の土を敷いてその上に瓦を葺く工法なのですが、この土が多すぎると雨漏りします。
瓦には水返しといって溝のような物や防波堤のような出っ張りがついています。瓦の上部に葺き土がハミ出るほど土を盛りすぎると、土が水分を吸い この水返しを越えて雨漏りしてしまう訳です。
そのため、このような場合は一旦瓦をめくって既存の葺き土を撤去し新しく葺き土を少なめにして瓦を戻してあげると雨漏りも解消されます。しかし、葺き土が少なすぎると瓦がずれ落ちるので握りコブシ大程度の最低限の量は確保しましょう。
【見た目では何の変哲も無い地瓦】 ↓
【葺き土の量が多すぎて、瓦の水返しまで葺き土がハミ出して雨漏りしている】 ↓
拡大 ↓
2-3-3.構造上、及び以前の工事の施工不良の正しい雨漏り修理方法④(板金)
板金工事の施工不良による雨漏りもあります。
和瓦屋根で板金を使用する箇所は谷部か水切、笠木などです。その全てに共通する事ですが、板金同士の接合部の重なり幅が少ない事による雨漏り。見えない重なり部分のシーリングを打ってない事もあります。これは完全な手抜き工事です。
【見た目では分からない、手抜き工事】 ↓
あと、板金材を固定するために打った釘の頭をシリコンで巻いてない場合もよくあります。こちらは経年経つと、中の下地材の木材が寒さと熱さで伸縮膨張をくり返し、結果釘が一人でに抜けていくのです。そうなると、釘伝いに雨漏りします。
そのため、このような場合の補修はシーリングをキチンと打ってあげるだけで解決できます。
板金材自体の劣化がいちじるしいような場合や板金の形状が機能的に悪いような時は、新しく板金材を新調する事をおすすめします。(場所にもよりますが、既存の板金を撤去せず上から重ねて張れるような場合はカバー工法で仕舞ってあげると工事代金もお安く済みます)
【笠木板金の重なり部に、シーリングを打っていない、見えない手抜き工事】 ↓
【結果、雨漏りし下地は腐ってボロボロに…】 ↓
2-4.棟の傾き(のし瓦の傾き)による雨漏り
屋根の1番高い箇所をのし瓦3段以上で積んである部分を棟(本棟)と呼びます。
この棟の のし瓦の段数は高い方が意匠性もよく雨漏りしにくい屋根になります。寄棟と呼ばれる形の屋根では隅棟と言う本棟から下に降りる棟があり、その棟を隅棟と呼びます。その隅棟をのし瓦2段で積んである住宅が結構多いのですが、この2段積みの隅棟からの雨漏りも非常に多いです。
【本棟のし3段、隅棟のし2段のため雨漏りしやすい構造の屋根】 ↓
【拡大】 ↓
【本棟のし5段、隅棟のし3段のため雨漏りしにくい構造の屋根】 ↓
【拡大】 ↓
雨漏りする原因はのし瓦の勾配が緩くなってしまうと、横風がきつい時に雨が降ると棟の内部に雨が浸入してきて雨漏りします。
このような場合は漆喰も剥がれているケースが多く、漆喰の劣化が雨漏りの原因と思い込み漆喰を直すも、雨漏りが止まらないという現場に出くわします。そうならない為にも、のし瓦の勾配不良をしっかりと見立てする必要があります。
熟練の職人でも見立てが難しい箇所になりますが、地瓦の勾配とほぼ同等の勾配があれば理想的な のし勾配です。
【のし瓦の勾配不良による雨漏り。1段目の のし瓦の勾配がほぼ水平で緩勾配】 ↓
【拡大】 ↓
2-4-1.棟の傾き(のし瓦の傾き)による雨漏りの正しい修理方法(簡易的)
のし瓦の勾配が緩くなったり、逆勾配になってしまった場合は直し方が2種類あります。
あまりおすすめはしませんが、のし瓦が勾配不良になっている周りの隙間をシリコンで全てふさぎます。そうする事によって物理的に雨水の浸入箇所を強制的にふさぐのです。
ただしこちらは先ほど2-3でお話しましたが、通常は水の捌け口までもふさいでしまうと雨漏りの危険性が高くなるとお話したとおり、シリコンに亀裂が入るとたちまち雨漏りが再発します。
このような危険を伴う工事を行うケースは、工事予算が限られている場合や、近々引越す(売る)予定、近い将来 屋根 全体を葺き替える予定がある為一時しのぎの応急処置で雨漏りを止めたいなどの場合に限られます。
【やむを得ず、シリコンを隙間なく打つ】 ↓
【拡大】 ↓
2-4-2.棟の傾き(のし瓦の傾き)による雨漏りの正しい修理方法(しっかり)
しっかり根本原因から直す場合は、一度棟を仮撤去します。
棟を一度仮撤去しキチンとのし瓦の勾配をつけてあげれば完了です。この時、棟の中の棟土を南蛮漆喰に変更し(防水性が向上します)古くなったり切れてしまっている棟瓦の緊結用銅線を18番手ほどの太さのに交換してあげると完璧です。
【水に弱い葺き土を、防水性のある南蛮漆喰へ変更して棟の積み直し中】 ↓
あと棟瓦を撤去した時でしか行えないような事も合わせてやっておくと尚よいでしょう。(ウロコ瓦の葺き直し及び加工など)
【ウロコ瓦加工中】 ↓
2-5.トップライト(天窓)による雨漏りの正しい修理方法(簡易的)
1-5でもお話したように、トップライトからの雨漏りは非常に多いです。
その原因でダントツ多いのは、シーリングの劣化による雨漏りです。シーリングが劣化した事によりその隙間や亀裂から雨が浸入し雨漏りにつながります。そういった場合は新しくシーリングを充填してあげると雨漏りは止まります。
もしくは、シーリングに劣化や亀裂が無い場合は、トップライト周りのゴミを掃除してあげるだけで雨漏りが止まる場合もあります。実はトップライトの周りは水捌けが悪い事が多く、そのため埃やゴミ、枯葉などが周りに蓄積されそれが元で雨水がスムーズに排出されず、結果毛細管現象(水が重力に逆らって上に登ってきます)を起こし雨水が浸入してくる場合もあります。
2-5-1.トップライト(天窓)による雨漏りの正しい修理方法(しっかり)
トップライトからの雨漏りは構造的なことを言うときりがありませんが、大半の場合鉛板(鉛で出来た柔らかい板)が劣化して不具合が起きています。
この場合はトップライトの周りの瓦をグルッと仮撤去します(この際にトップライトの板金部やルーフィングに異常が無いか良くみます)そして鉛板に異常があれば新しく交換し、ついでに防水テープやシーリングを新しくやり直して良く掃除してあげると完璧です。
3.雨漏り工事別、修理費用の目安
3-1.面戸漆喰が原因の雨漏り修理費用の目安
面戸漆喰が原因で雨漏りを起こしている場合は2-1でお話した通り、既存の漆喰を撤去する事がこのましいです。そして新しく漆喰を新設します。
費用の目安は 【m/3,500円~7,000円】 が適正な金額ではないでしょうか。田舎の方の立派な入母屋作りのお屋敷ともなれば面戸のメーター数も80mをゆうに越えてきますので単価もお安くなると思います。
切妻屋根や寄棟屋根など一般的な屋根であれば、面戸漆喰の長さは20~40m程度です。谷があったり入母屋屋根など複雑な屋根になると50mは軽く越えてきます。
3-1-1.役物漆喰が原因の雨漏り修理費用の目安
鬼瓦や東鬼、棟の取り合いや、棟尻など役物漆喰と呼ばれる所が原因の雨漏りの修理費用目安は2-1-1でお話した通り既存の役物漆喰を撤去後、鬼首の隙間に変成シリコン(普通のシリコンはNGです)を打ってから漆喰で仕上げる事がこのましいです。
費用の目安は 【箇所/5,000円~10,000円】 が適正な金額ではないでしょうか。切妻屋根は鬼瓦が2器の場合が多く、寄棟屋根の場合は鬼瓦が4器に東鬼瓦が2器の場合が多いです。
鬼瓦がたくさん乗ってある複雑な屋根などは単価もお安くなるとおもいます。
役物漆喰1箇所だけの修理で雨漏りが止まる事も多いです。
3-2.谷板金が原因の雨漏り修理費用の目安(簡易的に直す)
和瓦屋根の谷板金が原因の雨漏りを簡易的に直す場合は、シリコン補修や、塗装工事、平板の部分補修となります。
2mほどの谷の場合で【箇所/12,000円~35,000円】ほどではないでしょうか。
基本谷がある一般的な屋根の場合は谷部の数は1~3箇所が平均的です。
3-2-1.谷板金が原因の雨漏り修理費用の目安(しっかり直す)
和瓦屋根の谷板金が原因の雨漏りをきちんと根本的に直す場合は、1度付随する瓦を一旦仮撤去する必要があります。
そして板金自体を新しいものへ加工し新設します。それから瓦を復旧するという修理が必要です。
費用の目安ですが2mほどの谷の場合で【箇所/50,000円~80,000円】ほどではないでしょうか。
谷の形状や材質、現場しだいで金額が大幅に変わる箇所になりますので、事前に良くしらべてもらい追加工事にならないよう念を押して見積もりを取ってもらいましょう。
3-3.以前の工事の施工不良が原因の雨漏り修理費用の目安①(瓦止め)
シリコン材にて瓦止めを間違って施工してある場合は、瓦の捌け口をふさいでしまっているシリコンの撤去が必要です。
費用の目安は、のし瓦3段積みの棟部の場合【m/1,500円~3,000円】ほどではないでしょうか。
桟瓦(地瓦)の場合【㎡/2,500円~5,000円】ほどではないでしょうか。
一般家屋で切妻屋根で棟の長さが両側20mで30,000円~、桟瓦の面積が40平米で100,000円~程度になります。
3-3-1.以前の工事の施工不良が原因の雨漏り修理費用の目安②(漆喰)
漆喰工事の施工不良の場合は既設の漆喰を一度きちんと撤去して、なおかつ葺き土の量が多い場合は葺き土も削る必要があります。
費用の目安は3-1.の金額プラス【m/500円~1,000円】ほどではないでしょうか。
3-3-2.以前の工事の施工不良が原因の雨漏り修理費用の目安③(葺き土)
葺き土の量が多い場合は一旦桟瓦をめくって葺き土を撤去し、適切な量の葺き土に施工しなおして瓦を納めてあげます。
費用の目安は【㎡/18,000円~36,000円】ほどではないでしょうか。
3-3-3.以前の工事の施工不良が原因の雨漏り修理費用の目安④(板金)
板金の施工不良のほとんどは、見えない箇所の手抜き工事になります。そのため一度板金をめくってみる必要があります。
シーリングを打っていなかったり、重なり不足だったり、板金の形状が悪かったりと様々です。
大まかな目安は【1箇所18,000円~60,000円】ほどではないでしょうか。
3-4.棟の傾き(のし瓦の傾き)による雨漏りが原因の雨漏り修理費用の目安①(簡易的)
のし瓦の勾配がきちんと取れておらずに、限りなく平行もしくは逆勾配になっている場合に棟を積み直さずに、シリコン材にて応急処置的に水の入口をふさいでしまう方法です。(お勧めは致しません)
のし瓦3段積みの費用の目安です【m/5,000円~10,000円】ほどではないでしょうか。
3-4-1.棟の傾き(のし瓦の傾き)による雨漏りが原因の雨漏り修理費用の目安②(しっかり)
のし瓦の勾配がきちんと取れておらずに、限りなく平行もしくは逆勾配になっている場合には根本的に棟の積み直しが必要となります。一旦棟を仮撤去して正しい勾配で積み直していきます。
のし瓦3段積みの費用の目安です【m/15,000円~30,000円】ほどではないでしょうか。
3-5.トップライトによる雨漏りが原因の雨漏り修理費用の目安①(簡易的)
トップライトは定期的に小まめなメンテナンスをおこなわないと、すぐ雨漏りに直結します。シーリングの劣化による雨漏りが特に多いです。
費用の目安です【1箇所/12,000円~24,000円】ほどではないでしょうか。
3-5-1.トップライトによる雨漏りが原因の雨漏り修理費用の目安②(しっかり)
トップライトは定期的に小まめなメンテナンスをおこなわないと、すぐに雨漏りに直結します。劣化がひどい場合はトップライト自体の交換になります。品物と下地材の状態にもよりますが。
費用の目安です【1箇所150,000円~300,000円】ほどではないでしょうか。
4.まとめ
さて、長くなってしまいましたが和瓦屋根が原因の雨漏りトップ5は以上になります。
その他にも雨漏りの原因はありますが、ほとんどの場合上記で雨漏りしていますのでまずはここから疑っていきましょう。
原因不明の雨漏りはありません、必ず原因があります。
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